人間をやめる 

仏教実践の研究と資料

純粋な認識を手に入れるために①

前回はいわばヴィパサナーの要となる「純粋な認識(名色分離智)」

について少し説明を試みてみました。

今回は具体的にどのような実践が純粋な認識の獲得につながるのか

考えていきたいと思います。

 

マハーシの方法論ではある意味この認識を得ることを前提として

やり方が決まっているといってもよいものです。

そのためマハーシ長老の著作スマナサーラ長老の著作を読んで

そのまま実践すれば、気づきや集中の深まりとともに

自然と身につくものと言えると思いますが、

集中や気づきはどのように深まっていくかを考えつつ

少し細かいところまで書いてみたいと思います

(具体的なやり方についてはこちらをご参照ください)

http://www.j-theravada.net/4-vipassa.html

 

✳︎まずはじめに念頭においておくと良いのはヴィパサナーの実践、

特にマハーシ長老の示すようなやり方は、勉強というよりも

スポーツや武術のトレーニングに近いということです。

体や道具の扱いに習熟するのと同様に、注意の向け方集中の仕方を

身につけていく認知のトレーニングといえます。

なので一度でいきなりできるようになるということは

なかなかないのですが、やったらやっただけ結果は出ます。

またこれもスポーツなどに通じることと思いますが、

特に最初の頃はある程度1日にまとまった時間(できれば4時間以上)

実践できると目覚しい効果を実感できると思います。

 

それを踏まえた上で、実践の方針としては3つあります(以前の内容重複してしまいますが)

1、常時の心の安定を確保する(戒の実践)

2、粗大な対象からより細かい対象に集中できるようにする(集中の実践)

3、速く変化する対象にも細かく注意を向けられるようにする(気づきの実践)

この3つは相互に関係し合っていてこの中の一つが進歩すれば

他の要素も実践しやすくなります。

まず1から順番に説明していきます。

 

1、常時の心の安定を確保する(戒の実践)

これは当たり前のことなのですが、ヴィパッサナーの実践においては

非常に大事です。

なぜなら普段の心があまりに波立っていると、瞑想を始めても

なかなか集中状態に入っていけないからです。

逆にいうと行動を慎み落ち着いた生活を営んでいると

すごく瞑想をするのが楽に感じます。

またヴィパッサナーの実践を平時の心の安定に生かすこともできます。

実践における「気づき」は自身の行動を反省したり、

戒めたりすることに役立ちますし、

集中力が増せば日常生活における失敗も減ります。

そのように平時の心の安定がよい瞑想実践を生み、

瞑想実践によって培われた集中や気づきがまた、

平時の心の安定を呼びます。

これは三学でいえば「戒」の実践といえますし、

八正道の実践とも言えます。

より深い段階のヴィパッサナーを行うには

このようなベースとなる実践が必要不可欠です。

 

次回は2、3について実際に実践する際の具体的なポイントや進め方を考えてきたいと思います。