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仏教実践の研究と資料

『自由への旅』について①

ジョーティカサヤドーの『自由への旅』が出版されました。

https://www.amazon.co.jp/自由への旅-「マインドフルネス瞑想」実践講義-ウ・ジョーティカ/dp/4105068725/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1480165687&sr=8-1&keywords=自由への旅

 

この本は内容的に素晴らしく、

私もこのような本があったらヴィパッサナー実践を

進めやすかっただろうな、と思いました。

まだこの本を買っていない方、これからこの本を読んで実践する方のために

いくつか記事を書いてみたいと思います。

まずはまだ買っていない方のためにこの本の素晴らしい点を紹介します。

 

①ヴィパッサナー実践の全体像がつかめる

ヴィパッサナーを実践する上で必要十分な知識を盛り込み、

実践的な方法論を提示する指南書というのは

すでにいくつか出版されています。例えば

スマナサーラ長老『自分を変える気づきの瞑想法』

https://www.amazon.co.jp/自分を変える気づきの瞑想法【第3版】-ブッダが教える実践ヴィパッサナー瞑想-アルボムッレ・スマナサーラ-ebook/dp/B011CMR84A/ref=sr_1_8?ie=UTF8&qid=1480166050&sr=8-8&keywords=ヴィパッサナー

グナラタナ長老『マインドフルネス』

https://www.amazon.co.jp/マインドフルネス-バンテ・H・グナラタナ/dp/4905425204/ref=sr_1_12?ie=UTF8&qid=1480166050&sr=8-12&keywords=ヴィパッサナー

ブッダダーサ長老『呼吸によるマインドフルネス』

https://www.amazon.co.jp/呼吸によるマインドフルネス-瞑想初心者のためのアーナーパーナサティ実践マニュアル-ブッダダーサ比丘/dp/4865640231/ref=sr_1_11?ie=UTF8&qid=1480166050&sr=8-11&keywords=ヴィパッサナー

などです。

 

しかし、ヴィパッサナーの実践で漸進的に達成される「悟り(洞察智)」を

各段階ごとに丁寧に説明し、修行全体の見通しを立ててくれる著作というのは

ほとんどありません。

日本で出版されているもので言えばマハーシ長老の著作ミャンマーの瞑想』

https://www.amazon.co.jp/ミャンマーの瞑想_ウィパッサナー観法-マハーシ長老/dp/4877315934/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1480166449&sr=8-2&keywords=ウィパッサナー観法

くらいですが、内容が非常に凝縮されているため、この『ミャンマーの瞑想』を

読んだだけではなかなか実践することは難しいと思います。

 

『自由への旅』ではテーラワーダ仏教の実践的な論書である『清浄道論』に

基づいた七つの清浄の段階とその各段階に現れている洞察智一つ一つを

説明してくれています。しかもパーリ語を用いた辞書的な説明ではなく

それを押さえつつもご自身の実践や指導経験に基づいた、現代人にもわかりやすい

言葉で説明して下さっています。

あくまで実践し自分で経験することが前提ですが、本書を丁寧に読めば

自身の実践の段階を的確にテーラワーダの修行階梯に位置づけることができます。

 

②ヴィパッサナー実践で必要な仏教用語を学ぶことができる

ヴィパッサナーの実践する上では、何か特別な知識はいりません。

ただ方法論に則って純粋に観察を続ければ良いだけです。

ただ実際に行う上でどのようなことに留意したら良いかや、

現れてきた心の状態の解釈すること関しては

やはり専門の仏教用語を知っていると便利です。

翻訳者の魚川氏もあとがきで書かれていますが、

この『自由への旅』はヴィパッサナーの実践を理論的に解説した

講義録であるため、ウ・ジョーティカサヤドーの著作にしては

例外的にパーリ語の引用が多くなっています。

しかし、この著作に出てくるパーリ語(とその漢訳語)は実践する上で

重要なものばかりです。覚えておいて損はありません。

しかも難解に思われるような用語も実践的な文脈でわかりやすく

説明して下さっています。

今まで辞書的な知識として知っていた言葉も、サヤドーの豊かな表現力によって

新たな息吹が与えられ、実践する上での活きた言葉へと変わっていくと思います。

(それが翻訳でも感じられるのはひとえに、日本語に丁寧に移して下さっている

魚川氏の表現力のおかげでしょう。知識だけでなく表現や言い回しも含め大変な

仕事だったと思われますが、素晴らしい訳業だと思います)

 

③かゆいところに手が届く【Q&A】

個人的に嬉しかったのは2章以降、各章末につけられている【Q&A】です。

Q(講義への参加者の質問)が不明であるやり取りもあるのですが、

A(ウ・ジョーティカサヤドーの回答)が何しろ素晴らしい。

この本の第9章までの内容をすでに経験している人にとっても、

ウ・ジョーティカサヤどーの解説には思わず膝を打つことでしょう。

 

以上ざっと『自由への旅』の良い点を挙げましたが、次回はこの3つのポイントから

もう少し詳しくこの本の紹介を行いたいと思います。